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「106万円の壁」ってなに? 社会保険加入義務がカギ



「123万円(旧103万円)の壁」が話題になることが多いけど、最近よく聞く「106万円の壁」って何かな?



「106万円の壁」は、社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が発生するかどうかを判断するラインの一つです。
週の所定労働時間が20時間以上、賃金月額8.8万円(年収換算で約106万円)以上、雇用期間1年以上の見込み、学生ではない、などの条件を満たすと、パートやアルバイトであっても社会保険に加入しなければいけません。
特に「特定適用事業所」にあたる職場(従業員数が一定以上)では、この条件を満たした従業員は強制的に加入となります。
いままでの変遷と2026年10月の拡大



「特定適用事業所」って大企業だけの話だと思ってたけど、どのくらい拡大されてるの?



実は、2016年10月から段階的に適用範囲が拡大されています。
– 2016年10月:従業員501人以上の事業所が対象
– 2022年10月:従業員101人以上へ拡大
– 2024年10月:従業員51人以上へ拡大(予定)
– 2026年10月:さらに要件が縮小され、小規模事業所も対象になる見込み



つまり、今は「うちは従業員数が少ないから関係ない」と思っていても、2026年10月以降には社会保険への加入義務が発生する可能性が高いんです。
106万円の壁を超えると手取りが減るって本当?



106万円を超えると、やっぱり手取りが減るのかな?



そうですね。社会保険料の本人負担分が給与から控除される分、短期的には手取りが減ることになります。
一方で、厚生年金に加入することで将来の年金額が増えるメリットや、健康保険で傷病手当金などの手厚い給付を受けられるメリットがあります。
ですので、短期的に「手取りが減る」というデメリットだけを見ないで、長期的な保障の拡充という側面も踏まえて検討することが大切です。
経営者側も社会保険の負担増を前提に経営計画を



従業員が増えると、会社としても社会保険料を負担しなきゃいけないんだよね。



そうなんです。社会保険料は労使折半で負担することになります。
これまでは「特定適用事業所」に該当しなかった小規模事業所であっても、2026年10月以降の適用拡大により、想定外の社会保険料負担が発生する可能性があります。



経営者の皆さまには、将来の人員計画や給与設計を考慮する際に、社会保険の負担増を見越したうえで、事業計画や採用戦略を立てていただく必要があるかもしれません。
もちろん社会保険に加入することで、「社員の定着率が高まる」「安心して働いてもらえる」といったメリットもありますが、会社のコスト面とバランスを取ることが重要ですね。
その他の年収の壁(123万円、130万円、150万円)との違い
1. 123万円の壁(旧103万円の壁)
– 所得税が非課税となるライン。2025年の改正で103万円→123万円に引き上げ。
2. 130万円の壁
– 健康保険の「被扶養者」認定基準。年収130万円未満なら家族の被扶養に入れるが、超えると自分で保険料を負担する必要あり。
3. 150万円の壁
– 配偶者特別控除が徐々に減額される基準。年収150万円を超えると控除額が縮小し、最終的には控除を受けられなくなる場合がある。



「税金(所得税・控除)」と「社会保険(厚生年金・健康保険)」は管轄やルールが異なります。
短時間勤務でも収入が増えると、その時点で各種保険や税金の負担が変化するため、自分・家族・雇用先(会社)の事情を総合的に見て判断することが必要です。
まとめ
1. 106万円の壁=社会保険加入の義務
– 週20時間以上、月収8.8万円(年収106万円相当)以上、雇用期間1年以上などの条件で強制加入。
2. 2026年10月に適用範囲のさらなる拡大が見込まれる
– 小規模事業所も巻き込まれ、経営者側は社会保険料の負担増を前提に経営計画を立てる必要がある。
3. 短期的には手取りが減るが、将来の保障は手厚く
– 厚生年金の受給額が増え、健康保険の各種給付を受けられるメリットも。
4. 他の年収の壁とも混同しない
– 123万円、130万円、150万円など、それぞれ税金や保険の別ルールがあるため、状況に応じた対策が重要。



次回は、措置法として導入されている「8段階の基礎控除」について解説します。年収や所得状況に応じて変わる控除額のしくみは、意外と見落とされがち。しっかり押さえておくと役立ちますので、ぜひお楽しみに!
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